1台のPCが導いた“ITインフラの道”
家にPCがやってきたのは、幼稚園児のころです。幼少期からパソコンに触れる環境で育ってきたので、小学2年生のころには一通りタイピングができるようになっていました。中学生になると、将来は情報系の道に進みたいと思うようになり、高専への進学を目指しました。高専では、プログラミングから電子工学、制御工学、機械工学といった幅広い知識を学ぶことになります。特に興味があったプログラミングを扱う部活動に入部し、競技プログラミングやチーム開発に熱中しました。競技プログラミングとは、出題された問題の要件を満たすプログラミングのスピードと正確さを競うものです。要件を読み解き、知識と技術でかたちにするプロセスを繰り返した経験は、現在の仕事にも役立っています。
もっとプログラミングを深く学びたい思いから、高専から大学に編入して情報工学を学びます。研究室では、企業との共同研究でAIを用いた医療画像解析ツール開発に取り組みました。ちょっと面白そうという軽い気持ちで飛び込んだのですが、そこで待っていたのは苦難の連続でした。
まず、引き継ぎで渡されたプログラムについてドキュメント化がされておらず、前担当者も卒業してしまっており、1からコードを解読する必要がありました。また、所属していた研究室はもともとAI分野の研究は行っておらず、周りにもAIについて聞けるような環境はありませんでした。そこで、ほかの研究室の教授に聞きに行ったり、ネットや文献で調べたりと、課題に対して解決に向けて行動する力は、ここで養われた気がします(笑)。開発が煮詰まってくると、要望通りの結果が出づらくなり研究室に泊まる日々。もうAIはこりごりだと思いました。
研究室ではサーバー管理者を担当し、もともとハードウェア領域が好きだったこともあり、大学卒業後は、日本の大規模ITインフラを支える仕事がしたいと考えるようになります。それならば大企業を目指すべきですが、あえて大企業の系列企業を目指しました。大きい組織での下積みより、小さい組織であっても即戦力として働きたかったのです。
よもやのAI開発業務へ、絶望から希望の光が
先に内々定をもらっていた企業はあったものの、実は迷っていました。なぜなら、面談で「それなりの残業時間を覚悟してくれ」と言われたのです。残業の有無よりも、「残業するのは当たり前」という企業文化に疑問を抱きました。そんな中で、最終的に選んだのはNTTコムエンジニアリング(以下、コムエンジ)でした。人事の方が就活生に対して真摯に向き合う姿勢が印象的で、私のパーソナリティに合わせて面談の社員の方をアサインしていただくなど、手厚く対応してくれたのです。しかも、先に内々定の出ていた企業はユーザーサポート寄りの業務、コムエンジは当初から目指していたITインフラに関する運用保守の業務ですので、入社を決意しました。
入社後、研究室時代のトラウマがあったAI開発をやってほしいと言われました。しかも、今まで研究でもプライベートでもWindows PCを使用しており、コムエンジでも当然Windowsを用いて業務を行うものだと思っていたところ、MacBook proを支給されたのです。初めて使うOSですので、今後の業務で使いこなせるかどうか不安でした。そこで上司に相談したところ、「ひとまず取り組んでみてほしい」とやさしく諭され、AIの知識はあるのでいったん挑戦してみることにしました。
働き始めると、いきなり新規のAI開発案件にアサインされました。一瞬、学生時代の悪夢が頭をよぎりましたが、一緒に案件に携わった指導担当の先輩たちが的確な指示やジャッジを出してくれたので、開発はスムーズに進みました。徐々に仕事に面白さややりがいを感じるようになり、これが本当のAI開発のリアルな現場だと理解しました。一転、「AIっていいな」と思いましたね(笑)。
当然ですが、学校と業務のプログラミングには大きな違いがあります。前者は要件に合わせてつくるだけでいいのですが、後者は要件を満たすことに加えて、自分以外でもわかるように「リーダブルコード(可読性の高いコード)」でつくる必要があります。つくれば終わりではなく、チームで継続して、新機能の実装などにより完成度を高めるプロセスがあるためです。このことは、大きな気付きとなりました。
さらに案件に関わる定例会やお客さまへの説明、メンバーへの依頼や確認などで、“伝えること”の重要さも実感しました。自分の思考を過不足なく相手に伝えるために、“受け手目線”で適切な言葉を選ぶことが大切です。常に話す相手を意識した自問自答を繰り返したことで、最近では徐々にですが、限られた時間内でわかりやすく伝えるテクニックが身についてきたと感じています。
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自律自転で突き進む
“AIエンジニアのスペシャリスト”
受け手目線で伝えることで、お客さまに喜ばれた経験もあります。お客さまに対してAIモデルの精度評価を報告する資料をつくることになり、上司から「(1年目だから)昨年の報告資料をベースにまとめてみて」と指示されたのです。そこで、どうやればお客さまにわかりやすく、かつ多角的に評価できるのだろうと考えました。そして、Excel、Pythonのプログラムを駆使して、グラフィカルな図表を盛り込んだ資料を制作し、お客さまに報告したのです。すると「こんな報告は初めてだ。ぜひ資料で使っている図表のデータをください」と高評価をいただきました。受け手目線で伝えることが仕事に直結して、とてもうれしかったですね。
現在の主な業務は、AI開発ライブラリの内製化です。もともとは他社のツールを使っていたのですが、お客さまのニーズに完全に応えることができない、ライセンス料が高いなどの理由から、内製化を目指すことになりました。まだ2年目なのですが、テックリードとしてチームのメンバーの指導を担当し、ときにはチームリーダーから開発方針を相談されることもあります。さらに、AIモデルの開発業務にも携わっています。これまで2件のPoC案件でAIモデルの開発を手掛けたのですが、いずれもお客さまから喜ばれました。いまは、AI開発の最前線で働ける幸せを感じています。
いまコムエンジは、AI領域で新しい収益を目指しています。そんな目標の先陣を切る一人として実績を積み上げ、将来はコムエンジを牽引するAIエンジニアの第一人者になりたいです。そのためにはAIの知識や技術のみならず、クラウド、データベース、アプリケーションなどの広範な知見も求められます。あくまでAIはパーツに過ぎず、さまざまなパーツが組み合わされてソリューションとなります。もちろん、既存ビジネス領域で醸成されたコムエンジの強みも組み合わせ、相乗効果で収益化することにも挑戦したいですね。私は「自律自転」の精神で、自ら考え、判断し、行動し、振り返りながら駆け上がっていきたいと考えています。
OFF TIME
最近、メタバースにはまっていて、ソーシャルVRで遊んだりしています。VRでは手軽に運動もできるので便利ですが、在宅勤務の中、外に出なくなったのは困りものです(笑)。もちろん、近いうちにコムエンジのビジネスとメタバースを結びつけることも念頭にあります。
PROFILE
橋本 和貴
橋本 和貴(はしもと かずき)/AIエンジニアのスペシャリスト
2021年、NTTコムエンジニアリングに入社。わずかキャリア1年弱にしてAIエンジニアの「E資格」も取得し、チームを率いて2件のAIモデルの開発案件を成功させている。AI領域で新しい収益を目指すコムエンジの期待のニューフェイスだ。